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デジタル化

私が直面した、中小企業のDXを阻む3つの問題

デジタル化

私は14年ほどIT業界で働いており、今は複業として、地方にある社員十数名の製造業(金属加工系)のIT顧問をやっています。ITとは程遠い企業へ入ってみて実体験を通して分かったのは、中小企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)したくても、それを阻む大きな問題が3つあるということです。

※「DX」の意味が分からない場合は「IT化」と読み替えてください。意味は異なりますが、この記事でお伝えしたいことの本質には影響ありません。

問題(1) 大手企業へ発注できない与信の問題

私はIT顧問として関わっているので、実務面は外注しようと思い、まずは馴染みのある大手企業を当たります。ここで直面したのが「与信」問題。

※与信とは、受注者が、発注者へ納品したあとに代金を回収するまでの期間、信用を与えることです。もし代金が回収できなかったら、納品した分が取りっぱぐれることになります。

中小企業、特に小規模企業の場合、大手企業に発注させてもらえないことがあります。いま現金を持っていても与信が通らない場合もありますし、そもそも与信チェックさえしてもらえない場合もありました。

働き方改革推進支援助成金」というものもありますが、発注できなかったら意味ないですよね。これ、現金ではなくバウチャーにして、国から受注者へ直接支払われるようにしてくれたほうが、与信のハードルが下がるんじゃないかしら。

問題(2) 需要過多によるリソース不足問題

大手は諦めて、中小企業へ外注しようと思い、請け負ってくれる企業を探しました。中小企業のほうが、大手と比較すると安いことが多いですし、与信が通りやすいためです。

ここで直面したのが、「リソース不足」問題。
平たく言えば、「忙しくてこれ以上は受注できないよ」ということです。

ここから先は、受注者側の企業の目線で考えてみてください。

受注側のリソースとは

受注する側はリソースが限られています。例えば、10人いる企業で、残業しないとすると何時間分働くことができるでしょうか。

150時間/月 × 10人 = 1,500時間/月

1カ月あたり1,500時間ですね。ということは、この範囲を超える受注は厳しいということになります。

受注側は利益の最大化を目指している

では、この限られたリソースを利用して、利益を最大化するにはどうすれば良いでしょうか。

より単価の高い仕事を受注することです。150時間で100万円の仕事と、150時間で300万円の仕事があった場合、後者のほうが効率良く利益が上がります。(原価等を考慮せず、ざっくりと考えています。)

小規模企業から受注するメリットとは

小規模企業の場合、規模が小さいため、中小企業や大手企業と比較すると基本的に発注額が小さいです。なので、先ほどの通り、利益の最大化を目指す上では受注者にとってのメリットが小さいです。

では、どのような場合に、あまり名前の知られていない小規模企業から受注するメリットがあるのか考えてみました。

(a) 発注側が小規模でも、有名な企業であったり、珍しいことをやろうとしている場合
 → 受注した企業の事例としてアピールし甲斐があるのでメリットになります。

(b) 受注側が、たまたまリソースが余っている場合
 → 暇しているより少しでもお金を稼げるのでメリットになります。

(c) 受注側が、できて間もない企業であったり、リリースして間もないサービスで、まだあまり実績がない場合
 → 実績が必要なので、受注件数が増えることがメリットになります。

私がIT顧問をしている企業の場合、(a)は当てはまりません。
(b)は、DX関連の需要と供給でいくと、圧倒的に需要過多であり、なかなかリソースが余っている企業というのは稀だと思います。ただ、タイミングが良ければ受注してもらえますし、私のツテで何とかお願いしている状況です。お話を聞いてくださる企業の方には本当に感謝しています。
これで折り合いがつかなくてだめなら(c)でいきます。

問題(3) DXにかかる費用感のギャップ問題

DXを推進するにあたり企業へ業務を発注するのに、いくらくらい費用がかかると思いますか?

IT以外の業界の方々と話して感じることですが、頭の中で思い描いている費用感に大きなズレがあることが多いです。実際、私がIT顧問をしている企業でも、想定しているよりも数倍もしくは数十倍の費用がかかることを知って「やっぱり今のままでいいや」と言われたことがあります。

なぜそんなに高いのか

コンサル費用や業務委託にかかる技術費用は、その企業であったり個人の長年の知識や経験、スキルの費用です。パッと見た感じ簡単そうな作業でも、そこに行き着くまでの調査や試行錯誤、経験があり、それが費用として積み重なっています。

例えば、紙の本って一冊1,000円だったり1,500円だったり、専門書だと1万円することもありますよね。でも、紙代と印刷代だけだったらこんなにお金はかかりません。その本を書き起こすにあたって、膨大な調査や労力、苦悩があり、まとめた情報が価値となり、本の値段となっています。

コスト以上のメリットがあるか判断することが大切

「ただ高いからやめる」ではなく、「高いけど、その金額以上のメリットがあるからやる」。その判断に必要な材料を集めたり説明したりするのは、IT顧問である私の仕事であり、かなり重視しています。

一方で、DXはあくまで手段ですので、現状のままでも問題がなく、今後も問題ないであろう部分については、無理にDXを進める必要はありません。私は発注側に寄り添う立場なので、費用対効果を考えて、どこに投資すべきかを考えています。

「必要ないものは必要ない」、そう言わない受注側の企業も中にはいます。受注したほうが利益が上がるからです。なので、発注側でしっかり判断することが大切です。

実際、「なんでこれ買っちゃったの?」という現場を目撃したことがあります。。

おまけ) 副業に対する費用感のギャップ問題

企業ではなく、副業している人へ発注したら安いと思っている人、いませんか?

たしかに、企業へ発注するよりは安く済む場合が多いと思います。ただ、費用感が大きくずれていると、副業している人へも発注することができません。

ここから先は、ITを専門にする複業家としての意見を書かせていただきます。

副業マッチングサイトの例

最近、副業マッチングサイトが増えています。主に地方の企業と、副業したい個人をマッチングするサイトをいくつか覗いているのですが、報酬の上限が時給5千円のサイトをよく目にします。

人によっては高いと感じるかもしれませんが、相場からすると圧倒的に安いです。私の周りでも、この金額ならやらないという声が多いです。すると、マッチングサイトへ登録する人が少ないので、なかなかマッチングしなくなります。

国がDXや副業を勧めようとしているのに、費用感がずれていると、進むものも進まず、非常にもったいないです。もし上限を決めているマッチングサイト運営の方がこれを読んでいましたら、上限を外していただけませんか?そのほうが活性化すると思います。

支援金が出るマッチングサイトの例

中小機構(中小企業基盤整備機構)の施策である「中小企業デジタル化応援隊事業」という取り組みがあり、発注側(中小企業)と受注側(IT専門家)の双方をサポートする素晴らしい仕組みがあります。
※残念ながら既に募集終了しています。

ただ、発注側の意識次第で、その効果は大きく変わります
ざっくりこの制度について書くと以下のような感じです。

・時間単価は、発注側と受注側で決める。
・最大3,500円の支援金が受注側へ出る。
・発注側の実費負担は最低500円必要。

つまり、時給4,000円の契約であれば、発注側は500円を払う、受注側は4,000円を受け取るということになります。

そこで実際に私の周りであったのが、発注側が受給側へ時給4,000円で依頼しようとすること。なぜなら、時給4,000円は、支援金が最大の3,500円が出て、発注側は最小限の500円の出費で済む、最もお得なパターンだからです。

時給4,000円で受注するIT専門家はどれだけいるのでしょうか。
中小機構はこれを望んでいるのでしょうか。

例えるなら、Go To Eatキャンペーンで500円キャッシュバックだから、500円でおいしいものを食べさせてくれと言っているようなものです。

「500円分だけ食べられれば良いから」と思う人もいるかもしれませんが、時給の場合は時間で区切られているので、一部分を差し出すことができません。

お得感を得たいだけなのか、本当にDXを推進したいのか、目的が曖昧だと双方が損をしてしまいます。もし、後者が目的であれば、しっかり話し合って時給を相談したほうが大きなメリットを受けられるかと思います。

私は普段、IT化やDXの相談、IT基礎ワークショップ等の仕事をしています。宜しければ以下からお気軽にお問い合わせください。

最後までお読みいただきありがとうございました。